暑さとともに増えてくるのは、脱水の患者さんだけではありません。寝ていると、羽音をさせてイライラさせるアイツです。刺されたら最後、かゆさに苦しまされ睡眠を邪魔されます。そう、犯人は蚊。今回は蚊に対する対処法と、蚊取り線香の弱点について説明します。
蚊に刺されるとどうしてかゆいのか
蚊に刺されると、すごく痒いですよね。かゆさで、蚊に刺されたことを認識するくらい、その威力は強大です。かゆみだけでなく、大きく腫れ、かきこわし、悪化させる患者さんがいるため注意が必要です。
このかゆみと腫れの原因は蚊の出す唾液が原因なのです。蚊は、刺したときに相手が逃げないように、唾液を針から出すことにより局所麻酔の効果を得ています。また、針のなかで血液が固まらないように抗凝固剤の効果も併せ持っています。
しかし、蚊の唾液は人間にとって異物のため、免疫反応が生じて、皮膚を腫らし、かゆみを発生させるのです。アレルギー体質の人ほど、痒くなりやすく腫れやすい傾向にあります。
蚊にさされることで生じる皮膚トラブルとは
蚊に刺されると、免疫反応が生じ皮膚が腫れ痒みが生じることは、先ほど述べました。それは刺されてから15分から30分ほどで生じる即時型の免疫反応なのです。しかし、1〜3日ほど経過し生じる遅発型の免疫反応もあります。症状は腫れてかゆみが出るなど、即時型の免疫反応と違いは余りありません。青年以降では即時型の免疫反応が多く、乳幼児では遅発型の免疫反応がでやすい傾向があります。幼児では刺されてすぐの症状が引かない場合があります。この場合、遅発型の免疫反応が生じている可能性が有り、混合している場合もあります。症状の1つに痒みがあります。痒みに対してかきこわしてしまうと、細菌感染を引き起こす可能性があり、日常生活に影響を引き起こすため早期治療が大切です。
蚊に刺されたときの治療法
蚊に刺されたときは、刺された場所に炎症が生じています。炎症が生じているのは、免疫反応が生じている証拠です。症状として多くは痒みがあります。炎症に対しては、ステロイド外用薬が処方されます。ステロイド外用薬は、免疫を抑え炎症を鎮める働きがあります。痒みを抑える効果はないため、かゆみ止めのように用いることは、副作用を生じる可能性を高くするため、止めましょう。痒みに対しては、抗ヒスタミン剤が処方されます。痒みのある部位に適宜塗布するように処方されますが、医師の指示に従いましょう。
市販薬としては、オイラックスpz軟膏がそれにあてはまります。2-3日塗布して改善しなかった場合は、薬が合わなかった可能性もあるため、病院受診をすることをオススメします。
蚊に刺されることで発症するマラリア
マラリアはシマダラカという蚊に刺されることで、発症する病気です。重症化すると、集中治療を必要とする病気ですが、予防薬はなく、原則蚊に刺されないようにするしか注意方法はありません。マラリアが流行している地域に行く場合は蚊に刺されないように注意してください。
マラリアの疫学
世界保健機構(WHO)の推計によるとマラリアは100カ国で流行し、年間2億人以上の患者さんと、200万人の死亡者が出ているといわれています。多くは、アフリカに住む5歳に満たないお子さんです。アフリカ以外にもアジアや南太平洋諸国、中南米でも発生しています。発症のしやすさは人種により違いがあり、黒人の方はそれ以外の方と比べ三日熱マラリアという種類のマラリアにかかりづらい遺伝を持っています。そのため、もともと三日熱マラリアに強い黒人が住むアフリカでは三日熱マラリアは流行していませんでした。しかし、最近移民によりアジア人などが流入しており、三日熱マラリアの流行がみられる問題が生じています
私たち日本人も他人事ではいられません。それは、毎年旅行者がマラリアに感染する数が3万人程度いるといわれているからです。私たちの多くはマラリアに対する免疫を持っておらず、診断と治療の遅れが命取りになります。そのため、マラリアの流行地域に旅行へ行く際はどのような症状があるのか、どのような治療があるのか、そして大切な予防法はなんなのかを知っておく必要があります。
いまのところ、日本国内で発生したマラリアは旅行先で感染したモノや輸血を通して感染したモノなど「輸入事例」のみです。しかしながら、地球温暖化に伴いマラリア原虫を媒介するハマダラカが日本国内でも増加傾向にあり、いつ発生してもおかしくない状況ともいえます。そのため、日本国内にいるから大丈夫という認識は改めた方が良いでしょう。
マラリアの原因
マラリアの原因は、マラリア原虫です。原虫とは、微生物の1種類です。ウイルスでもなく、細菌でもありません。衛生環境が整った場所では、原虫による病気の発症は減少するといわれています。メスのハマダラカという蚊の中に潜み、ヒトを刺した際に体内へ侵入します。血液内に侵入したマラリア原虫は肝臓の中で分裂し増殖します。ある程度増えた段階で酸素を運ぶ赤血球を壊しつづけます。
マラリア原虫の種類として、熱帯性マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫があげられます。
マラリアの症状
マラリア原虫は、体内にとって異物です。マラリア原虫が体内に侵入すると、身体の異物と戦う免疫細胞が活発化します。免疫細胞は38度~40度で一番効率よく活動できるため、発熱します。したがって、マラリアの症状としての発熱はほぼ必ず生じるといわれています。
マラリアは体内に侵入後、肝臓の中で増殖するため「潜伏期」とよばれる症状が出ない期間があります。これはマラリアの種類によって異なり、熱帯熱マラリアでは12日前後、四日熱マラリアでは30日前後、三日熱マラリアと卵形マラリアでは14日前後と言われています。したがって、アフリカに旅行へ行きしばらくしてから発熱した場合、マラリアと気がつかず診断や治療が遅れる可能性があります。
発熱後48時間~72時間ごとに熱発作と呼ばれる発作を引き起こします。症状として寒気・震え・高体温・倦怠感・筋肉痛が生じます。なかには、吐き気や下痢など腹部症状や咳や息苦しさなどの症状が目立つことがあり、一般的な風邪との区別が付きづらいことが特徴です。したがって、マラリアの流行地域に旅行した場合は医師に必ずその旨を伝えるようにしましょう。
肝臓の中で増殖したマラリアが血管内に解き放たれると、血液の成分である赤血球を食い荒らします。その結果、経過と共に重症な貧血や血が止まらなくなる血液凝固障害、多くの臓器が機能しなくなる多臓器不全が生じ、最終的に腎不全や脳症を引き起こすといわれています。
マラリアの診断
マラリアの診断で確実なのは、染色といって血液を特殊な色素で染めて顕微鏡で覗くことで、マラリア原虫がいるかどうかを確認することとされています。しかしながら、それにはマラリア原虫を診たことがある人など、一定のスキルが必要なことや検査に時間を要するなど短所があります。
そこで、世界中で迅速キットとよばれる15分ほどで検査できるものが発売されています。しかし、日本では発売されていないことや、検出力(マラリアだと判断する能力)が低いことなどから、標準的な検査とはなっていないのが現状です。
したがって、顕微鏡検査と併せてマラリア流行地域の渡航歴や、臨床症状など複合的な判断により診断されることが多いでしょう。大切なのは、医師に情報をしっかりと伝達することです。
マラリアの治療法
マラリアの治療法は抗マラリア薬の投与が原則となります。重症化した場合は、呼吸・循環のサポートが必要となります。しかし、これらに関しては他の病気と対応は変わりません。日本国内でも4種類の抗マラリア薬が発売されています。経口投与(内服薬)で治療する場合がほとんどですが、重症化した場合点滴による静脈注射が必要となり、入院が必要となります。
マラリアの予防法
予防薬として薬は発売されていませんが、インフルエンザウイルスのタミフル同様、抗マラリア薬の傾向内服薬によりマラリアに対する予防効果を示すことが知られています。マラリア好発地域に旅行へ行く際は、医療機関に相談してみるのも1つの手でしょう。しかし、病気にかかっているわけではないので保険診療ではなく、自費診療になることを頭に入れておきましょう。
それでもマラリアの一番の予防法は、やはり蚊に刺されないことです。予防とはいえ、薬です。副作用がゼロではありません。肝臓にも負担をかけます。蚊に刺されない努力をすることでそのような負担を減らすことができます。では、どのように蚊にさされないように気をつければ良いのでしょうか。
くりかえしになりますが、温暖化にともない日本でもマラリアの発生する可能性はゼロではありません。日本にいるからといって、蚊に刺されないような努力が不必要なわけではないのです。
実は蚊に刺されやすい血液型はこれ!
よく、「私は蚊にさされやすい」という人いますが、それは本当かもしれません。蚊を引き寄せやすい成分として多くの因子(成分)が研究されていますが、その1つが血液型と言われています。そして、その血液型はO型。他の血液型と比較し、蚊にさされやすいといわれており、注意が必要です。
蚊に刺されないようにするためのグッズ
まず、蚊が生息している地域にいく時は、長そで長ズボンがおすすめします。登山などで半そで半ズボンの方を見かけしますが、蚊に刺されやすい以外にも、怪我をしやすいという弱点があります。
次に、忌避剤と呼ばれる薬剤があります。この薬を身体に塗り込んだり、吹き込んだりすることで、蚊を寄せ付けないように出来ます。代表的なのが虫除けスプレーや、蚊取り線香、アロマオイルです。蚊取り線香は、皮膚のかゆみや気道の狭窄などアレルギー症状を引きおこしやすい短所があります。
虫除けスプレーの成分と、副作用
虫除けスプレーをみると、多くの場合「ディート」という成分が入っています。ディートは米国陸軍により第二次世界大戦の経験に基づき開発されました。現在ほとんどの虫除けスプレーで使用されています。大きな命に関わる副作用は報告されていませんが、付着した皮膚がかぶれるなど、皮膚のアレルギー症状を引き起こす可能性があります。ディートが米国陸軍により開発され、その詳細が不明なことから警戒し、ディート不使用の虫除けスプレーを用いる方もいます。忌避剤としての能力は高く、マラリアの後発地域では入手しやすい特徴があり、蚊に刺されないための対策として、長そで長ズボンに、虫除けスプレーを振りかければ強固なものになります。
蚊取り線香の成分と副作用
あの独特な香りのする昔からある蚊取り線香は、除虫菊という菊からとれるピレトリンという成分を使用しています。あのにおいを嗅ぐだけで夏を彷彿させるくらい、日本では一般的にもちいられてきました。豚の蚊取り線香置きなども、アニメではよく見かけるものです。長く用いられているだけ、忌避材としての効果があるということです。ピレトリン自体に、身体に対する悪影響は少ないと言われていますが、問題は火をつけて炊かなければならないということです。ピレトリン以外にも、蚊取り線香を燃やすことで生じる有害物質が気道を刺激し、喉の痛みや咳、息のしづらいさが出る場合があります。蚊取り線香に、密室では使わないように注意書きが書かれているのはそのためです。
電子蚊取り線香
ベープ®などを代表される忌避剤は、除虫菊の成分であるピレトリンを化学的に合成したものからつくられています。一定の温度で揮発するように創られており、火気を用いないため、お子様のいる部屋でも安心して使うことが出来ます。また、揮発させるときに、蚊取り線香のような有害な煙が発生しないため、喉や気管に優しく有害症状を引き起こしづらいことも利点の1つです。短所として、揮発させるために電気を用いることにより、毎日電気代が発生してしまう点があげられます。
蚊帳という古典的だが、安全・安価な方法
映画「火垂るの墓」のなかで兄妹が防空壕の中で広げるシーンが印象的の蚊帳ですが、蚊取り線香や虫除けスプレーのように薬剤を燃やしたり吹き付けたりすることがないため、皮膚トラブルや気管トラブルなどの健康被害は生じません。また、一度購入すれば、繰り返し使用でき毎日のコストも発生しないため安価で済みます。そんな時代遅れなものを誰が使うかと思う方もいると思いますが、その利点に目をつけ使用してレビューを書いているブロガーさんもいらっしゃいます。
米国疾病管理予防センターによる、一番効果的な方法はこちら
ずばり、虫除けスプレーだとしています。それは、天然成分と比較し数多くの研究がなされており、予防効果が客観的にはっきりとしているという点です。したがって、虫除けスプレーを使用し、皮膚トラブルが生じなかった方は、虫除けスプレーをもちいるのがよいでしょう。
さらに、米国疾病管理予防センターはこんな方法も勧めています。
- 日焼け止めと虫よけを同時に使う場合は、最初に日焼け止めを塗り、乾燥させてから虫よけを使う。
- 寝る場所に虫が入ってくるのを避けられない場合は、蚊帳の中で寝る。
- 屋外で寝る場合は、蚊取線香、またはメトフルトリンやアレトリンを含む虫よけを使用する。
(引用:http://www.carenet.com/news/general/hdn/42405)
私は蚊に刺されない。刺されたくない。個々人によって考え方は様々ですが、その対策が別の健康被害を生んでしまっては、元も子もありません。ご自身だけではなく、ご家族の体調をみながら蚊に刺されないような対策を実践していってください!