現在、美容整形外科領域で「脂肪幹細胞移植」というのが行われています。脂肪の素となる幹細胞を乳房に注入することで脂肪が増殖し乳房が大きくなるという仕組みです。
シリコン製剤と比較しアレルギーの発現が少なく、脂肪を直接注入することによるサイズの減少も少ないといわれています。
今回は、そんな幹細胞移植が肝硬変の治療で行われている最新医学についてご紹介いたします。
自分で回復する臓器、肝臓
(引用:http://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/liver-problems/multimedia/the-liver/img-20007443)
肝臓は沈黙の臓器と呼ばれています。それは、肝臓自身が皮膚のように再生能力を持つため、大事になるまで自覚症状が出ないためです。自覚症状が出た段階で、治療は難しいともいわれることもあります。
成人の大きさで1~1.5kgといわれており、主に体内に入り込んだ毒物を分解する働きを担っています。毒物なんか摂取していないと思いますが、アルコールやタンパク質を分解したときに発生するアンモニアなどは体内にとって毒以外の何物でも無いのです。
魚やお肉などを摂取すると、タンパク質が分解され栄養に変わりますがゴミとしてアンモニアを発生させます。それが肝臓に運ばれると尿素になり無毒化されます。
トイレのあのアンモニア臭は、尿がしばらく放置され尿の成分である尿素が分解されることでアンモニアになっている証拠なのです。
肝臓はトカゲのしっぽのように回復します。生体肝移植などで肝臓を半分以上切除したとしても、数年後には元の大きさに戻ります。
これが冒頭でもお話しした、肝臓が沈黙の臓器といわれるゆえんなのです。
肝臓の病気とはなにか
肝臓の病気は大きく急性肝炎と慢性肝炎にわけられます。
急性肝炎とは、数日以内に起きる肝臓の機能が障害される病気です。主に、肝炎ウイルスの感染が原因とされています。
症状は、身体が黄色くなる黄疸、食欲の低下、吐き気や嘔吐、だるさ、発熱などがあげられます。
あまり重症化しないといわれていますが、約1-2%のヒトは劇症化といって激しい症状が出る可能性があり、一度でも劇症化してしまうと高い確率で死に至る可能性が高くなるので注意が必要です。
急性肝炎が数日の内に発症する肝臓の機能の障害といわれるのに対し、慢性肝炎は最低6カ月以上持続する肝臓の障害と定義されています。
急性肝炎同様、多くの原因は肝炎ウイルスです。その中でもB型およびC型肝炎ウイルスが多いとされています。
慢性肝炎が怖いのは、自覚症状が少ないということです。肝臓が傷つき、炎症を引き起こし、少しずつ回復するものの、またウイルスにより肝臓が傷つき、何度も何度も回復した結果、どんどん肝臓は硬くなっていってしまいます。
私たちの皮膚も何度も傷つくと、固くなってしまうのと一緒です。これを繊維化といいます。最終的に、かちこちになり、肝硬変とよばれる状態になります。
これまで肝臓を通過していた血液も、肝臓が硬くなった結果通過できなくなり身体の中に水分がたまりやすくなります。これがむくみや腹水につながります。
(引用:http://patient.info/doctor/ascites)
腹水はこのようにお腹の中に水がたまる症状です。水がたまると呼吸が浅くなり苦しくなります。多くの患者さんは、このお水を抜くことを望みますが、お水の中には栄養素もつまっており、抜きすぎると患者さんの栄養状態が悪化し、体力も低下してしまうため、抜きすぎることも出来ません。
また肝硬変に至ってしまうと、根治治療としては肝移植しか治療法がなくなってしまいます。
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iPS細胞が肝硬変を治療する世界
iPS細胞は、どのような組織や臓器にもなることのできる万能な細胞です。理論上は、身体を構成する全ての組織や臓器にもなることがいわれているといいます。
ここでのポイントは自分から採取した細胞からiPS細胞を作成し組織や臓器に変化させれば、それを移植するときに拒絶反応が生じないといわれています。
骨髄から採取した幹細胞が肝硬変を治療する
山口大学の坂井田 功先生は、2013年に肝硬変の患者さんから骨髄400mlを採取し、骨髄幹細胞だけを生成し、それを再度患者さんに戻すことで繊維化した肝硬変の組織が活性化することを調べる臨床研究行いました。
しかし、骨髄を400mlとるためには、全身麻酔を行い手術室で横を向いた状態でおよそ2時間程度必要になります。肝硬変の患者さんは、全身麻酔が与える影響が大きく、かなりの負担がかかるため、対象者が少ないことが弱点でした。
そこで2014年には、骨髄液を30mLほど採取し、その中から骨髄幹細胞だけを取り出し培養して増やしたのち、患者さんに投与をする臨床研究を行っています。
これならば、全身麻酔を必要とせず、局所麻酔で可能とするため、対象となる患者さんも多くなります。
しかしながら、幹細胞を培養するためには、高い技術を必要とし、ばい菌が増える可能性もあり、定期的な観察も必要とします。
高い技術を持つ臨床培養士の育成
山口大学では、このような肝硬変に対する幹細胞治療など再生医療に力を入れています。しかし、そこには高い技術を持った培養の専門家が必要なのです。
そこで、全国初となる「臨床培養士」の育成に乗り上げました。
臨床研究で、患者さんに効果があるとわかっても、それが実臨床に生かせなければ意味がありません。そのための専門家の育成、技術の確立など行わなければいけないことは山ほどあり、山口大学の戦略が熱いほど伝わるニュースです。
人間はいつしかミスを犯す
ヒューマンエラーの名の通り、ヒトはいつかミスを犯します。度重なるチェックをいれても、いつかは大きなミスにつながります。
多くの事柄が機械化され、人間では不可能だったきめ細やかな作業も自動化されてきました。
臨床培養士が育成されると同時に、それを機械が出来るようになれば、一斉に世界で救われる患者さんも増えます。
そこで、山口大学では培養のロボット開発に乗り出しています。
山口大学と一緒にロボット開発している澁谷工業とはいったい
どのような会社が、ロボット開発をしているのだろうかと思い、調べてみました。
ここでは恒例のwikipediaより。
1953年、2本の一升瓶の内外を同時に洗浄できる「二連式瓶洗機」を開発し、当時手洗いだった中小メーカーの作業効率化に貢献した[2]。
1993年、医薬品の瓶詰で実績のあった無菌充填技術を応用し、ペットボトルに無菌状態で瓶詰めできるボトリング装置を開発[3]。
ペットボトルの加熱殺菌が不要となったことからボトルの肉厚を薄くできるようになり、製造業者のコストダウンにつながった。樹脂製のふたをペットボトルに絞める技術の特許も開発し、ペットボトルのボトリング装置では100%近いシェアを持つようになった[3]。ボトリング装置関連は2014年時点でも売上高の64%を占めている[5]。
な、なんだって。瓶を洗ったり、ペットボトルを詰める会社が、いつの間にか再生医療に乗り出している。発想力が半端ないです。
社長である澁谷弘利さんは、どのようなヒトか調べていたら、こちらに面白い情報がありました。
すごく、ゴルフがお好きのようでゴルフの記事なのですが、それよりも着目するのはこちら。
「”なにくそ、やったるぞ”の根性が澁谷工業をトップメーカーに押し上げた」と語る。
この、やったるぞという気持ちと、山口大学の坂井田功先生の情熱が組み合わさって、肝硬変に対する幹細胞の治療がメジャーになるなんて、素晴らしい世界ですね。
まとめ
肝臓は自分で回復する特別な臓器ですが、それに甘えると回復が出来なくなる肝硬変という状態になってしまいます。今は移植以外の治療法はありませんが、骨髄幹細胞治療が確立すれば多くの人達が救われるかもしれません。そこを、「なにくそ、やったるぞ」というロボット開発の会社も支えているという情熱があることも付け加えておきます。
澁谷工業の社長がこんな本を書いています。
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