先日、堀江貴文さんが、東京改造計画なる書籍を発売し、話題になっていましたね。
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今回はその中で話題となった「低用量ピルで働き方改革」について、お話ししたいと思います。
Facebookで堀江さんが困ったと投稿していたのがこちら。
リンクされていたのが、こちらのサイトです。
まず月経について、整理させてください。
ピルとは、というお話をすると、その問題の本質を見逃しがちです。
そもそもピルとはどういうときに用いるのか?というよりも、月経とはなにか?
そして、それにより苦しめられている人はいるのか?ということについて、まとめました。
月経とは何か
まず、月経は女性が起こります。男性では起こりません。何が生じるのかというと
月経の定義として、「約1カ月の間隔で起こり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的出血」1)というのがあります。
つまり、約1ヶ月に1回、数日間出血が起きるのです。
武者2)の指摘によると、月経がはじめて生じるのは12歳で、早くに生じる早発月経とよばれるものは10歳未満で生じる人を指します。
ただ、これには人種(白人、黒人、黄色人種など)や社会・地域環境(開発国、先進国、清潔環境、不潔環境など)により影響を受けるとされており、日本でも早まってきているようです。
明治時代から昭和初期までの初経年齢は満14歳であったが現在では小学校3年生(9歳)で初経を迎えることも珍しくない。
つまり、早発月経が増えているということですね。
体重や脂肪エストロゲンとコレステロールなどの影響が考えられているようです。
月経が終了するのを閉経といいます。
閉経となる年齢は、平均50.5歳。
妊娠や出産により月経は止まりますし、低用量ピルの服用や、月経異常があればその期間止まることもあります。
反対に、妊娠や出産も経験せず、低用量ピルの服用や月経異常がない女性の場合、約40年近く,毎月100mL近く出血することになるのです。
これが男性には生じず、女性に生じる1つの生理的側面ということが、理解できたと思います。.
月経の頻度
繰り返しになりますが、初めての月経(初経)から月経の終了(閉経)まで、おおよそ40年近くの間、月経は生じます。
月に1回、短くて3日、長いと7日間で平均4.6日間起きます。
月経異常とよばれるものは、月経が生じない状況が通常よりも長く続いたりする状況をさします。
また、妊娠〜出産後までは月経が止まるので、この期間は休止している状況です。
月経に伴う症状
でも、出血するだけなら、「あぁ血が出るわぁ、嫌やわぁ。」と感じるだけですよね。
出血以外の症状があるので、大変なのです。
宮崎ら3)の文献レビューにて、月経に伴う症状がまとめられています。
この中で宮崎らが定めている定義をまず、確認しましょう。
「月経随伴症状:月経周期に随伴しておこる症状。月経前症状と月経時症状をあわせて月経随伴症状とした。
月経前症状は,月経開始の10日くらい前から月経が始まるまでの期間に生じる身体的,精神的,社会的症状であり
月経時症状は月経期間中に,月経に随伴して起こる病的症状である。」
つまりですね、月経が開始してから終了するまでの4.6日間の間は症状があることはもちろんのこと、その月経開始前の10日間から何らかの症状があると。
毎月月経開始前10日間、月経中平均4.5日間、何らかの月経随伴症状及び出血がある。
それでは、具体的にどのような随伴症状があるのか、確認していきましょう。
[ad#ad-1]女性の負担
身体症状
身体症状とは、一般的に身体に生じる症状を指します。
痛みやむくみ、だるさなどが、該当します。
宮崎らのレビューで最も多かったのは「腰痛」70.3%で,次いで「易疲労」65.7%,「眠くなる」52.7%だったそうです。
つまり、14.6日間、このような症状に悩まされている、ということですね。
精神的症状
精神症状とは、身体の症状としてはでてこないこない症状のことを指します。
「イライラする」69.8%が最も多く,「憂うつ」54.1%,意欲低下52.8%の順であったそうです。
社会的負担
実は、月経随伴症状は単に、身体が辛くなったり、精神的に辛くなったりするわけではありません。
労働基準法の第68条にはこのような記載があります。
「第六十八条 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。」
月経随伴症状がつらく、働けない場合は、休みをしっかりと与えなければいけませんよ、と決まっているのです。
が、しかし。
これ、日本の女性がどれくらい取得していると思いますか?
厚生労働省の平成27年度調査4)によると、「女性労働者がいる事業所のうち、平成 26 年4月1日から平成 27 年3月 31 日までの間に生理休暇の請求者がいた事業所の割合は 2.2%(平成19年度 5.4%)であった。
女性労働者のうち、生理休暇を請求した者の割合は 0.9%であった。」
大変少ないんですよね。この結果を持って、生理休暇を取得している女性が少ないということは、月経随伴症状は仕事に支障をきたすと考えるのは、早合点かもしれません。
月経が辛いと話をできずに、自分の有給を用いて休んでいたり、あるいは仕事の質が下がることを認識しつつも、我慢して働いている可能性もあるからです。
そこで、職場環境を整えることはもちろんのこと、内服薬でこの症状を抑えることができる可能性があるのです
ピル
ピルという薬を聞いたことがあるでしょうか。
また、どのようなイメージがあるでしょうか。
堀江さんが言った低用量ピルとは、一体どのような物でしょうか。
北村による調査5)では、女性の認識について、以下のように明らかにされています。
使いたくないという女性の方が、7割いる一方、3割の方は現在、もしくは将来的に使用したいと考えているようです。
では、その使用している方の、目的は何でしょうか。
確実な避妊を目的としたものから、月経痛や月経周期の安定など、月経随伴症状を緩和したいという理由が増えています。
この概要について、これから少し細かくみていきましょう。
月経のおこる仕組みについて
(厚生労働省:女性の生涯健康手帳より引用)
月経の仕組みを説明するたびに、この図を出してこなければいけないのが、話を難しくする根本なんですよね。
そして、ホルモンの名前が必ず出てきて、頭の中が???となる。
なので、極力簡単に説明します。
女性の身体の中で、まず卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が増加します。
その濃度が、ピークを迎えた後に、排卵が生じます。
そして増加するのが黄体ホルモン(プロゲステロン)です。
この後、精子と卵子が結びつかなかった場合、黄体ホルモンの分泌が止まり、子宮内膜が剥がれ出血するというわけです。
つまり、鍵となるのは、卵胞ホルモンと黄体ホルモンですね。
ピルの仕組み
ピルは、経口避妊薬(oral contraceptives)とも言います。
1950年代に、報告されたことがはじまり5)、とされています。
このときの薬は、黄体ホルモン(プロゲステロン)を内服し続けることで、通常受精しなかった場合濃度が低下する黄体ホルモンが低下しなくなります。
脳が、あれ?黄体ホルモン濃度が下がらないぞ?となるわけです。
これは妊娠中、黄体ホルモンの濃度が上がり続けるのと似ていますね。
妊娠期間中、月経は生じませんから、仕組みとしては「似ている」と言えます。
その後、卵胞ホルモンも加えたものが製剤として出るようになり、商品化されたわけです。
日本では、しばらくの間中用量ピルが使用されていたのですが、ホルモンの量が多く、吐き気などの副作用が大きいとされていました。
その後、日本でも低容量ピルがでるようになってきた、というわけです。
つまり、身体の負担が小さい薬の量で、女性ホルモンの働きを抑えたり、調整したりする薬というイメージですね。
ピルの活用方法
低容量ピル(低容量経口避妊薬(Low dose oral contraceptives:以下 LOC)の活用方法は、一体何なんでしょうか。
その日本語の名前の通り(ピルは正式名称ではない)、避妊薬です。
これが、ピルに対するイメージを「悪く」もし、「良く」もしているんですよね。
低用量ピルの主要な効果は「避妊」です。
しかし、高田らがまとめた資料において6)、日本産科婦人科学会のガイドラインの中に、経口避妊薬の内服に伴う「副効用」として、このようにまとめられています。
このことから、月経随伴症状の緩和や、その他の副効用について期待して内服することもある、というわけです。
ピルの取得方法
では、月経随伴症状や、副効用を狙って、ピルを内服したいと思ったとき、どこで入手することができるでしょうか。
日本の場合、医師が処方しない限り入手することができません。
つまり、薬局などで購入することができないというわけです。
医師から処方される場合、保険が適用される?と思った方、するどいです。
しかし、答えはそう単純ではありません。
月経困難症や子宮内膜炎の治療に対しては、保険適応されるのですが、避妊などを目的とした場合は、自費扱いになります。
いずれにせよ、自分の症状や使用目的が、経口避妊薬に適応可能かどうか、医師と相談する必要がある、というわけです。
ピルのもつイメージ
ピル自体を知らない人も多くいると思いますし、知っているひとも、それぞれの知識がバラバラだったりします。
木戸らの行った青年期女性への調査においても7)、4割近い人が使用したいというイメージを持っている一方で、実際の使用希望者は2割と少なく、その理由として情報の不足が8割、副作用に対する心配が約8割,入手方法や販売方法が閉鎖的であると感じているものが約6割となっていました。
この調査が行われてから15年が経過しているため、この結果を全ての青年期女性のイメージとして扱うことはできません。
しかし、Twitter上で賛否両論でたことを踏まえると、そもそもピル自体の認識が各自バラバラであるということ。
そして、その中には本当に正しい知識を持っているのか、が曖昧な部分があること。
次に、月経随伴症状により、月の半分を体調不良により、過ごす可能性があるということ。
このような状況が潜在的にあることを、理解しておく必要があると思います。
スマルナというサービス
スマルナというサービスをご存じでしょうか。
スマルナは、医療機関を受診したときのように、医師と患者さんをつなげるサービスです。
医療機関と異なり、待ち時間がなく、予約も必要がないのが特徴です。
では、どのような診察をしてくれるのか。
それは月経困難症や緊急避妊など、月経についての相談や経口避妊薬についての診察を結びつけてくれるのです。
あくまでも、スマルナは医師と患者さんを結びつけるサービスであり、実際の診察は医療機関がオンラインツールを用いて行います。
また、薬に関しても郵送による受け取りが可能なものもあります。
利用方法
実際の利用方法としては、会員登録をし、本人確認を済ました後、希望の医師を選択します。
その後、テキスト上で問診を行います。
実際に診察が準備されると、アプリ経由で通知が来ます。
この診察が済めば薬の処方となるのですが、その際、実際に直接診察が必要と判断された場合は、医師より説明があります。
このあたりは、一般の医療機関と同様、その指示に従い検査を受けるなどの対応が必要となります。
オンライン診療の限界も、あるということを認識しておいた方が良いということですね。
まとめ
いかがだったでしょうか。
月経、月経随伴症状、そしてピルについての概要を理解することができたでしょうか。
この知識を前提に、もう一度このことについて考えられると良いですね。
そして、スマルナというサービスも、相談する1つの窓口として、是非活用してみてください。
1)産婦人科用語集・用語解説集.金原出版,東京,2003.
2)武者稚枝子:月経①,WHITE 1(1),37-42, 2013.
3)宮崎仁美:月経随伴症状に関する文献レビュー – 日本の看護学研究論文による検討 -,母性衛生 58(1),31-39, 2017.
4)厚生労働省:「平成 27 年度雇用均等基本調査」の結果概要,https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-27-07.pdf#page=24.
5)北村邦夫:日本における低用量ピルの普及と世界各国との比較,思春期学,32(4),367-373,2014.
6)高田 恵子:ピルの普及を目指して (特集 知っておきたい今日のホルモン療法) — (ピル),産婦人科治療,98,684-689,2009.
7)木戸久美子, 林隆, 北川眞理子ら:青年期女性の低用量経口避妊薬(OC)のイメージとその普及に関連する要因の研究,母性衛生 44(1),74-82, 2003.