私は、普段からテレビを見ることがありません。それは、テレビを見ているとあっという間に時間が過ぎるのはもちろんですが、テレビから何をえたか?を考えると、「何も得ていない」ということが、多々あるからです。
映像の撮り方という視点や、情報の伝達方法という視点で考えると、テレビから得るものはありそうですが、あいにくそのような視点で見る必要がないのが現状です。
実は、もう1つ最近めっきり読まなくなったものに新聞があります。
新聞を読まなくなったきっかけは、実家を出て一人暮らしをはじめたことです。
そもそも毎月5000円ほどのコストを支払って、情報を得る仕組みに魅力を感じなかったというのも理由に挙げられます。
また、新聞配達のおじさんがあまり好きになれないというのもあります。
契約期限を迎えると、洗剤を持ってきて契約の更新を粘る手口に、うさんくささを感じ、強引さが鼻につく印象がありました。
しかし、最近ひょんな事から、新聞読んでみようかなというきっかけがあったので、まとめてみます。
日本の新聞を取りまく環境について
日本の新聞は世界トップクラスの発行部数をほこる
世界新聞協会によると、世界の新聞発行部数は日本の読売新聞がトップの969万部、ついで朝日新聞が745万部、3位が毎日新聞の332万部と、インドの新聞社が同率という結果になっています。
(こちらより引用:http://factboxglobal.com/world-newspaper-2013)
この結果を見ると、米国の新聞社はトップ10にすら入っておらず、中国やインドなどアジアの国々が占めています。
単純な解釈として、アジアは新聞を読む習慣が残っており、米国では新聞を読む習慣が残っていないということです。
しかし、果たしてそれは本当でしょうか。
日本の新聞発行部数は世界トップクラスとはいえ、その発行部数は年々下がってきているという現実があります。
日本新聞協会による新聞発行部数の推移をグラフ化したものがこちらです。
2つのグラフからわかることは
・世界の新聞発行部数で日本がトップである。
・日本の新聞発行部数は年々減少している。
また、ここでしっかりと確認しておかなければいけないのは、10年前の新聞発行部数はどうだったのかということです。
10年前の新聞発行部数が他の国々がトップクラスで、日本の新聞発行部数が少なければ、世界の新聞発行部数がここ10年で急激に減少したと考えます。
(世界新聞協会 2008年報告より引用)
これはおよそ10年前の新聞発行部数ですが、このころから日本の新聞発行部数はトップクラスであるということがわかります。
以上のことから、日本の新聞発行部数が減少したことで、日本の新聞発行部数ランキングが変動したという解釈が正しいようです。
したがって
・日本の新聞発行部数はそもそも世界と比較し多い。
・日本の新聞発行部数は年々減少している。
ということがわかります。
日本とアメリカの新聞販売方式の違い
日本は新聞を新聞販売店による個別宅配制度を設けています。
そのため、新聞社は新聞記事を執筆・編集し、流通である販売までも行っています。
これは、日本の出版業界における記事の作成・編集・流通と似ています。
毎朝、毎夕、同じような時間にバイクで配達する姿は、日常風景としてありますよね。
高校時代にバイトをしていた人もいるかと思います。
それに対し、アメリカの場合は一部では個別宅配を行ってはいるものの規模は小さく、多くはニューススタンドやスーパーなどで購入するそうです。
ニューススタンド、と聞くと一体何だろうと思うかも知れませんが、下の写真を見たことがある人は結構いるのではないでしょうか。
アメリカの場合は自分で新聞を購入しない限り大がかりな営業や、配達はされません。
それに対し、日本の場合はどこから聞きつけたのだろうか?というくらい、突然営業に来たりします。
そして、無理矢理に近い形でも契約を結ぼうとすることもあります。
したがって、日本の新聞発行部数が世界トップクラスなのは、この世界に例を見ない個別宅配制度のおかげともいえるかもしれません。
この個別宅配制度で発達した日本でも、新聞の発行部数が下がってきているのだから、アメリカでも当然発行部数は下がってきて当然です。
そこで、かなり早い段階から行われたのが新聞のインターネット化と、有料会員制度による囲い込みです。
アメリカにおける新聞のイWeb化によるマネタイズの仕組み
アメリカにおける新聞のWeb化に対しては、NewsPicksの編集長であり、東洋経済オンラインの編集長でもある佐々木紀彦さんの書いた本が参考になります。
この中で、ここ10年間のアメリカのメディア業界について、佐々木さんはこう述べています。
過去10年間、米国メディア界は大激震に見舞われました。インターネットの浸透による部数減、リーマンショックに伴う広告減、そして、スマホやタブレットの普及──これまでの常識を根底から揺さぶるような大波が、メディア業界を飲み込んだのです。
こうした構造変化に対応すべく、米メディア企業各社は、すさまじい量の血を流しました。
新聞社のフルタイム職員数は、2000年の5・6万人から、2012年には4万人にまで減りました
これは実に、約3割の人間が職を失った計算になります。
過去10年、米メディア業界が繰り広げた〝血みどろの戦い〟は、今後10年の日本を占う上で、またとない参考資料となります。
ある意味、米メディア界は、日本メディア界にとってのモルモット役を演じてくれているのです
アメリカのメディア業界の収益ががっくりと落ちた要因として、
・インターネットの浸透
・広告の減少
・スマホの浸透
をあげています。
アメリカの事情をそっくりそのまま日本に当てはめて議論することは、芸がないように映ります。
しかし、上記3要因に関しては日本においても全く同じような傾向をたどっているのではないでしょうか。
また、日本の新聞発行部数が右肩下がりなのは、この3要因の他にはないでしょう。
ここで、ポイントとなってくるのが、アメリカの新聞業界はどのように新たな血路を開いていったのかということです。
そこに対し、佐々木さんはこのように述べています。
購読料収入アップの牽引役となったのが、2007年9月のメーター制導入です。
メーター制とは、ウェブ上での有料課金システムの一種で、無料と有料をうまく組み合わせた「フリーミアム」モデルの一種です。
その特徴は次のようにまとめられます。①1カ月間に一定本数(たとえば10本)だけ無料で記事を読める
②一定本数を超えた場合、有料会員にならないと、それ以上の本数を読めない
③有料会員になれば、あとは読み放題。100本でも1000本でも読める
④検索エンジン、ソーシャルメディア経由で拡散された記事は無料で読み放題
⑤デジタル版の有料会員の料金は、紙の購読料金よりも安いケースが多い
長い歴史が培った良質な記事をSNSや無料版で閲覧できるようにすることで、インターネットを主に使う世代やスマホを主に使う世代の眼に止まるようにしたのです。
紙という理由から、新聞購読をしてこなかった世代が、スマホやインターネットであれば閲覧するという行動に出たのです。
その結果、有料会員が増え、新聞社の収入が増えたという流れになります。
ここで、ポイントは更にもう1つあります。
それは、有料会員が増えることにより生じた収益増は、広告収入のように増減が激しくないということです。
したがって、安定した収益基盤を築けるようになったということになります。
このことから、日本の新聞社が生き残るのは個別宅配制度を活かしつつ、インターネットやスマホユーザーの固定客をいかにつかむのか、ということに尽きるでしょう。
記事作成方法による日本とアメリカの違い
日本とアメリカでは、新聞の宅配制度が大きく異なるということは前項で述べました。
もう1つアメリカと日本で大きく異なる点があります。
それは、日本の記者は自前の記者で占められているのに対し、アメリカの記者は半数が外部の記者なのです。
その結果、外部の記者は社風にとらわれず自由に論説できる一方、日本の記者は社風に縛られ自由にかけない部分が出てきてしまいます。
その結果、速報性や独自色が見えづらく、記者の顔も見えづらくなってしまっています。
これが、Webで私たちがみるニュースがどれも一辺倒で、どの新聞社が提供していようがいまいがあまり関係ない感じをうける理由なのです。
だから、多くの人達が、ニュースはネットやスマホで見れば十分だと考えます。
たとえば、それが新聞社から提供されたニュースであっても。
その結果、新聞社はニュース提供の不安定な収益しか得られず、発行部数も落ちこむという負のスパイラルに入り込みます。
でも、私は最近新聞には新聞の良さがある、そう感じることができました。
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新聞で特定のニュースを追いかけること
Web上でみるニュースは、単発的に「こんなことがあったんだ」と知ることに、十分役割を担ってくれます。
速報性も十分で、次々に更新されるニュースを追うだけで、その最新情報をスマホやインターネットから得ることが出来ます。
しかしながら、大きな政治課題や経済問題、あるいは長期間に及ぶ社会問題などの場合、情報が散在し、全体像がつかみづらいという欠点があるのです。
新聞の読み方について、最近明治大学の齋藤孝さんが、以下のような本を出しています。
この中で齋藤さんは、最近の大学生についてこのように語っています。
今の大学生は新聞でニュースをざっと読む習慣がないので、急に「英国のEU離脱問題について説明してください」と言っても、深いが話が出来ないのです。
これは、インターネットやスマホによる断片的なニュースばかりみることにより、同じニュースを一覧するような能力が欠如し、一定の大きな問題について話すことが出来ないということを意味しています。
そのなかで、齋藤さんは明治大学の学生さんに、新聞を2週間読ませ、自分の興味のあったニュースについてスクラップブックを作らせるそうです。
左側には新聞の記事、右側には自分のコメント、そして印象に残った理由について書きます。
このような訓練を2週間行うことで、新聞を読むことが苦痛ではなくなり、なおかつニュースの把握力がつくため、その時に話題になっていたニュースに関して、しっかりと説明することが出来るようになるといいます。
インターネットやスマホで見るニュースと、新聞で読むニュース、いずれも新聞社から提供されたニュースなのにもかかわらず、閲覧方法により理解力が異なるのは意外ですよね。
実は、全く同じ事を指摘している著名人がいます。
佐藤優さんと、池上彰さんの新聞の読み方について
佐藤優さんは元外交官で鈴木宗男さんの事件で逮捕起訴されたことをきっかけに作家に転向された方です。数多くの著者や、読書数の数の多さで有名です。
池上彰さんは、NHKの週刊こどもニュースで、こどもにもわかりやすいニュースを提供することで有名になられました。
その二人が、普段からどのように情報を収集しているのかを述べているのが、以下の本です。
この中で、池上彰さんは新聞の読み方について、毎朝何紙もの新聞に目は通すものの、見出しをばかりで、じっくりと読み込むことはないそうです。
そして、夜になって目にとまった見出しの記事を読むそうです。
この特徴についてこのように述べていました。
経済やビジネスの動きを書道でざっと抑えるのには便利です。(中略)全体のフレームを大づかみするのにもいい。
それに対して佐藤さんも
「本格的に知識を身につけたい」と思ったら、やはり書籍に進むべきです。
と述べています。
齋藤孝さん、池上彰さん、佐藤優さんの3名の新聞の読み方や活用法をまとめると、次のように理解できます。
・新聞はニュースを一覧することができる。
・新聞でニュースの全体像をつかむことができる。
・深掘りしたいニュースがあった場合は書籍に移行する。
インターネットによる新聞の閲覧は是か否か
まず、読み手の意見として齋藤孝さんや池上彰さんは紙面の方が良いと答えています。
その理由として、お二人はスクラップブックを作成するなど、紙としての用途が必要だからです。
それに対して、佐藤優さんは紙面よりもインターネット上の文字のほうが速く読むことが出来るという点と、
Evernoteで管理しているという点からインターネットの紙面をフルで活用されていました。
次ぎに、収益という観点でいうと、日経新聞は有料ユーザーを多く抱えており、アメリカの新聞社と競合するレベルに達しています。
これに対しては、日経新聞が経済情報に特化した新聞であり、日本の会社員の多くが仕事で活用する情報源として利用しているため、有料会員が多いという点があげられます。
朝日新聞や毎日新聞、産経新聞などインターネット上で読むことが出来る紙面のデジタル化を行っています。
当然有料での提供ですが、日経ほどの収益は上げておらず紙の収益のほうが多い傾向にあります。
そのため、今後は外部の記者が新聞社に流入し、Webでのニュース提供にオリジナリティがでてきて、特定の読者がつくようになるまでは、紙面のほうが収益としては大きそうです。
このような観点から、「どちらが読みやすいか」という視点で選ぶのが良さそうです。
私が実際に産経新聞デジタル版を契約し2週間新聞を読み続けた結果感じたこと
産経新聞デジタル版を契約した頃、話題だったのが安倍首相とプーチン大統領の首脳会談でした。
ネットニュースの論点は、主に北方領土問題に終始し、それが返還されないから負けだという論調だったと記憶しています。
しかしながら、産経新聞では
・これまでのプーチン大統領と安倍首相やその他の首相とのやりとり、その関係性
・北方領土問題のまとめ
・プーチン大統領の狙い目
・安倍首相の狙い目
・ウクライナ紛争における経済制裁と日ロ間の距離感
など、領土問題だけではなく、経済問題、首相との関係性、国際情勢と二国の置かれた状況など、多角的に解説されており、日露首脳会談を容易に一覧することが出来ました。
このときに、「北方領土問題」について深掘りしようかなと考えて、書籍に手をだそうかと思っていたところです。
ちなみに、産経電子版は毎月1800円で読むことが出来ます。
新書2冊分なので情報量としてはお得かなと、考えてます。
そのほか新聞デジタル版はこちらです。
まとめ
・世界で日本の新聞が売れ続けているのには、個別宅配制度という独自の販売路線があるから。
・今後、日本の新聞はアメリカ同様契約者数はどんどん低下していく。
・インターネットによる契約者数を増やすためには、外部記者による自由性が必要
・新聞にはネットニュースにはない、ニュースを一覧できる利点がある。
・読者側としては新聞は紙面だろうが、インターネットであろうが、読みやすい方でOK
・2週間読み続けると主要なニュースについて語れるようになる。