最近、私のFacebookのタイムラインやTwitter上などで「布ナプキンにしてから生理がおくれなくなった」という女性の声がたくさん流れてきています。
おいおい、マジかよという驚きでしかありませんでした。
それは、確かに効果があるかもしれないけど
「万能」ではないし、一歩間違えると病気の発見が遅れる可能性すらあるので、注意が必要ですよと。
そこで、今回は看護師の視点から、月経不順に対しては、布とか紙とか、そういう話ではなくて、まずは病院に行けよというお話をしたいとおもいます。
そもそも布ナプキンってってなに?
紙おむつに対して、布おむつがあるのと同様に、紙ナプキンがあるのに対して、布ナプキンがあります。
布ナプキンは、絹などの繊維でできているものが多いため、「肌に優しい」という理由から手に取る方も多いです。
また、洗うことにより繰り返し使えるため、お財布にも優しく環境に優しいという理由から、手に取る方もいます。
紙ナプキンの外観はこのように、無機質です。
(こちらより引用:http://macrobiotic-daisuki.jp/napkin-macrobiotic-11579.html)
それに対して、布ナプキンは布でできており、繰り返し使えることから、下着のように様々な柄があります。これが「かわいい」と感じる女性もいるようです。
女性ならば一度は経験したことがあるかもしれませんが、紙のナプキンは蒸れやすいという特徴があります。
皮膚は蒸れに対して敏感で、陰部のかぶれをひきおこすことがあります。
それに対し布ナプキンは蒸れづらく、下着と同じような素材を使っているため、皮膚にやさしいという利点があります。
蒸れや無機質なデザイン、あてた時の感触がごわついており、そのまま一定期間すごすのはストレスに感じます。
それを布ナプキンに変更することにより、改善されるため、ストレスが解消されるというわけです。
ストレスが解消されると、月経不順や月経前症候群(PMS)とよばれる月経前のイライラや頭痛などの症状が抑えられると考えられています。
布ナプキンを利用するうえで、注意しなければならないこと
当たり前のことですが月経は、血液です。血液は、細菌やウイルスなどが含まれていることがあります。血液を介して感染しやすいものが、B型肝炎やC型肝炎です。
特にB型肝炎の感染力は強く、洗濯した程度では落ちない可能性があります。そのため、もし自分が肝炎ウィルスを持っていた場合は、紙ナプキンを使用することをお勧めします。反対に、これら感染症をもっていないのであれば、安心してご利用ください。
細菌やウイルスのようなばい菌は、単純に消毒をすれば落ちるもの、洗濯だけで落ちるもの、両方しないとならないものなど、そのばい菌により異なります。
そのため、まず手洗いや洗濯を行い、物理的にばい菌を振り落とします。その次に、漂白し消毒によりばい菌をやっつけます。そして、最後にしっかりと乾かしましょう。
この際に、乾燥が甘いとばい菌が繁殖する結果となり、陰部に炎症が生じるリスクがあります。
もし、かぶれが軽い場合は、こういう軟膏を試してみてください。
よくみかける、大間違いの宣伝文句
「紙ナプキンはケミカルなもので、経皮毒があり、身体にとって害悪」
こういう趣旨の宣伝をみたことがありませんか。
「紙ナプキン」といわれますが、実際使用されている原材料は石油系素材。
肌にあたる部分は、漂白されたポリエステル、ポリプロピレン、レーヨンなどの不織布。内部には、漂白された綿状パルプ、高分子吸収材、ポリマーなどの吸収促進剤、消臭目的のデオドラント材、香料など化学物質がふんだんに使われています。
製品を清潔に保つため法的に漂白が義務付けられており、一般の紙ナプキンには塩素系漂白剤が使用されています。吸収材である高分子ポリマーは皮膚障害をひき起こす有害化学物質。
今現在、これらの化学物質の私たちの体への安全性は確立されていません。いつも当たり前に使っている紙ナプキン。
それは有害物質のかたまり、「ケミカルナプキン」なのです。私たちが生理中に長時間使用する紙ナプキンや使い捨て生理用品は、経皮吸収率がとても高い陰部と接触するため、経皮毒のリスクも高いことが危惧されています。
(こちらより引用:http://macrobiotic-daisuki.jp/napkin-macrobiotic-11579.html)
いいたいことは、なんとなくわかる気がしますね。紙ナプキンは、化学的な物質でできており、それを皮膚に直接あてがうことで、なにか害を及ぼしそうだと。
そもそも、化学物質が皮膚から吸収され、それが体内に害悪を及ぼすほどの悪影響は基本的にありません。医薬品の痛み止めに使用する麻薬や気管支拡張薬など、ゆっくり効かせたい場合などで利用する場合がありますが、日常にあふれたものでそのような効果が出るものはないでしょう。
もっというと、この「経皮毒」という言葉すら、医学用語ではありません。アロマセラピーやオーガニック用品を扱う分野の人たちが好んで利用する言葉でもあります。
したがって、経皮毒を理由に布ナプキンを使用することは、手間などにより新たなストレスを生み出す可能性があり、生理周期が整わない可能性もあります。
amazonで「経皮毒」と調べると、あふれんばかりに書籍が出てきます。はたして、このうちの何%が医療関係者なんでしょうか。
経皮毒の議論をすると、この紙面ではたりなくなってしまうため、一例をリンクで上げておきます。
そもそも、どうして月経周期が整うのか
月経は、ホルモンの連鎖で成り立つ
まず、この月経についての説明ですが、思春期を過ぎ継続的に月経がある方を対象にしています。そうではない方は、別の問題がある可能性がありますので、ご了承ください。
まず、脳にある視床下部から性腺刺激ホルモンが分泌されます。
そのホルモンを脳にある下垂体がキャッチすると、卵胞刺激ホルモンが分泌されます。
そのホルモンを卵巣がキャッチすると、卵胞ホルモンが分泌されます。
卵胞ホルモンが分泌されると、子宮の内膜が厚くなっていきます。
どんどん、卵胞ホルモンの濃度が高くなっていき、ピークに達すると脳の下垂体で卵胞刺激ホルモンの分泌がストップします。もう、卵胞ホルモンはいらないから、刺激しないで!という意味ですね。
そして、そのかわりに下垂体は黄体形成ホルモンを分泌します。
すると、子宮では排卵が起こり、卵胞が黄体へ変化します。
黄体になると、黄体から黄体ホルモンが分泌されます。
時間の経過にともなって、黄体ホルモンがピークに達すると、黄体は白体へと変化し、黄体ホルモンの分泌は止みます。その間およそ2週間を要します。
黄体ホルモンの分泌がとまると、月経になるわけです。
このように、脳の視床下部から分泌された性腺刺激ホルモンをきっかけに、リレーのバトンのようにホルモンが引き継げられ、月経となるのです。
したがって、視床下部、下垂体、卵巣、子宮など、どこかしらに異常があった場合、月経は遅れたり、早まったり、全く来なくなったりします。
このあたりの内容は、生理用品のソフィさんが、わかりやすくまとめているので、詳しく知りたい方はこちらへどうぞ。
月経の遅れに対する検査方法
これまで月経があった方が、3ヶ月以上月経がこない場合、続発性無月経といいます。
検査方法は、月経の仕組みにそって行なわれます。
(こちらより引用:日本産婦人科学会:1.内分泌疾患,日本産婦人科学会誌,54(12),p552-571,2002.)
そもそも、脳の視床下部から性腺刺激ホルモンが分泌されていないだけなんじゃないか、と考え、採血による濃度の確認を行います。
もし、濃度が高かった場合、性腺刺激ホルモンは分泌されていると考え、卵巣を疑います。
卵巣の中に、卵胞の赤ちゃんがあった場合は、性腺刺激ホルモンが作用しづらい卵巣であるという診断が付きます。反対に、卵胞の赤ちゃんすらなかった場合には、卵巣の発育不全であると診断されます。
次に、性腺刺激ホルモンが少なかったり、正常であった場合には脳の下垂体を調べます。
脳の下垂体が異常の場合、脳腫瘍の可能性があるため画像検査により調べます。
次に、黄体ホルモンを使用し、月経が生じるか調べます。
もし、月経が生じた場合には、多少なりとも黄体ホルモンは出ているが、その量が少ないということが考えられ、第1度視床下部性無月経と診断されます。
これでも、月経が来なかった場合は、黄体ホルモンに加えて、卵胞ホルモンを使用します。
これで、月経が来た場合には、黄体ホルモンに加えて、卵胞ホルモンも少ないことを意味します。これを原因に合わせて、第2度視床下部性無月経や第2度下垂体性無月経と診断されます。
もし、それでも月経が来ない場合は子宮自体に問題があるとかんがえ、子宮性無月経と診断されます。
このように、先ほどのホルモンのリレーによって、どこの部位に異常があるのかを調べていくのです。
そして、その原因として若年の女性に多いのは急激なダイエットや陸上競技などの激しい運動、ストレスといわれています。しかしながら、病気として甲状腺の異常、脳の下垂体の腫瘍、子宮内膜炎、遺伝的疾患・・・・・・などなど、多くの原因があげられます。
したがって、布ナプキンを使用することにより、紙ナプキンで生じていたストレスが解消され、生理不順が解消されるというわけです。
しかしながら、月経不順の原因として、ストレスがたくさんある中の1つでしかありません。そのため、月経不順だから布ナプキンを試そうというのは、隠れた病気に蓋をして見逃す可能性があるということです。
続発性無月経は、放置すると不妊の原因となる場合もあり、注意が必要です。
そもそも、現代社会においてストレスって紙ナプキンだけ?
風邪症候群をふくめた多くの病気で、ストレスが関連しています。
これは、免疫細胞がストレスに大きな影響を受けるからです。
したがって、私たち医療者は1つの決まり文句として、「ストレスをなくしましょう」といいます。
しかしながら、数多くの医療者がストレスを抱えているように、現代社会でストレスを取り除くのは困難に等しいです。
そのため、この決まり文句には、言い換えが必要だと、私は思います。
それは、「日常生活の中で負担がかかるようなことはやめましょう」ということです。
例えば、過剰な飲酒や、偏った食事などがそれです。
だから、もし布ナプキンをつかってみて、手間が増えたのだとしたら、それだけでストレスが増え、月経不順は悪化する可能性があります。
布ナプキンを使用する目安として、布ナプキンを見たときに
・「わぁすてき。使ってみたい」と感じて使用するのはOK
・「世の中は化学物質だらけだから、布ナプキンを使ってみよう」は、まぁOK
・「月経不順は紙ナプキンだからだ!」は、NG
と、考えましょう。
繰り返しになりますが、一番怖いのが、月経不順を放置することです。
・月経不順は不妊の原因になりえます。
・月経不順はホルモン異常だけではなく、甲状腺異常などの病気が原因の可能性もあります。
・月経不順だったらまず行うのが医療機関の受診です。
まとめ
・月経の乱れは婦人科へ
・問題なければ布ナプキンでもいい
・布ナプキンを使って大変だったらやめるべき。
・布ナプキンを使う際は血液の取り扱いに気をつけて。
参考・引用文献
楢原 久司:月経不順・続発性無月経,日本産婦人科学会誌,59(9),p450-453,2007.
日本産婦人科学会:1.内分泌疾患,日本産婦人科学会誌,54(12),p552-571,2002.
国立スポーツ科学センター:月経について,p13-17,http://www.jpnsport.go.jp/jiss/Portals/0/column/woman/seichoki_handobook_4.pdf,2017.01.06最終閲覧